voice

「8月6日」

実は俺にとって
広島は特別な意味を
持つ地でもあるが故、

 

去年からずっとアップするか
悩んでいたメッセージをあえて
今日このVOICEを頼んで
アップしたいと思います。

 

※(この記事は2013年の9月から
10月11日に書かれ、
アップされなかった文章を
まとめたものとなります。)

 

東京を離れた病院でこれを書いている。
ごくプライベートな内容だけどゴメンな。

 

俺は今、生命の尊さ、美しさを
まざまざと見せつけられている。

 

ファンの中では結構知られてる
事実かも知れないが、
俺は幼き頃、半分ばあちゃんに
育てられた様なものだ。

幼稚園、小学校高学年くらいまでは常に一緒にいた。

 

数年前に書いた「工事地帯」という
曲は俺がガキの頃、
ばあちゃんといた風景を
思い出して書いたものだ。

 

そのばあちゃんが84の今、
命を燃やし宿命と闘っている。

 

広島という地で生まれ育ったばあちゃん。

 

被曝手帳を持っているばあちゃんからは
俺が小さな頃、戦争の悲惨な
体験をたくさん聞いた。

 

優しいばあちゃん。

 

俺は週の何日か、可能な限り時間を
見つけて遠く離れた病院まで行っている。

 

六月のある日、親族から連絡が入った。

 

ばあちゃんが倒れ集中治療室に入ったと。

 

家族を集めてくれとの医師からの
通告があったとの連絡が。

動揺した。

 

けど絶対信じなかった。
負けず嫌いとあきらめの
悪さだけが取り柄。

 

親族の誰もが「慎、逆らえない事もある。
もう84だ。仕方がない事もある。」と言った。

 

それでも俺は納得出来なかった。

 

駆けつけて無意識に
手を握り頭を撫でていた。

 

冷たくて冷たくて、管にまみれてた。
痩せ細った身体。

 

意識も虚ろな中。

 

俺を見るなり、この世で
一番美しい笑顔を俺にくれた。

 

あんな美しい天使の様な笑顔を
俺は今だかつて見た事はない。

 

苦しくて仕方がないのに俺に微笑んでくれた。

 

絶対に生かす。あきらめない。

 

8月、一瞬奇跡が起きた。

 

一命は取り留め、一般病室へ。

けれどそれは終わりを
見据えた環境変え
でしかなかった事を後から知った。

 

そしてどんどん悪くなる。

 

九月初旬、ついに最後の
病室へ荷物もすべて運ばれた。

 

医者が言わんとしてる事、察知したよ。
来るべき時が来るのか…。

でも嫌だ。まだ俺の心はあがいている。

 

ばあちゃん、大好きだった。
俺の子供の頃の記憶は
ばあちゃんばっかりだよ…。

 

小さな俺は、いつもひざに
乗ってはしゃいでいた。

 

あの頃は親族皆一つだった。

 

俺が昔の話をする時、
少年の頃の話をする時は、
決まってばばちゃんちゃんの
話をしていると
近しい人からはよく言われる。

 

意識はしていないけれど、
俺にとっての幼き日の記憶は
ばばちゃんに彩られているから。

 

そう言えば今年テレビに
出演させていただいた時も
そんな話をした。

 

少し大人になり俺は横道にそれた。

 

ロックをやり始めた時だって
いつも笑ってた。

 

俺が道を完全に道をそらさずに済んだのは
紛れもなくばあちゃんの明るく朗らかな
あっけらかんとした笑顔のおかげなんだ。

 

ハタチでデビューしてからも、
一緒に飯を食べたりした。

 

「法城君のサイン欲しいなぁ」なんて
ふざけていたばあちゃん…。

 

「それは俺の本当の名前じゃねえ!」なんて言いながら。

最近知った事だが、ばあちゃんは
あの頃の歌が好きだったらしい。

 

特に「消えないメロディー」という曲が。
毎日聞いていたと…。

 

成人してデビューしてからも、
鳴かず飛ばずの俺に一万円のおこずかいをくれたばあちゃん。

 

俺の中のばあちゃんは
あの頃のばあちゃんのままなのに。

 

食事はもうとれない。点滴のみ。

 

でも桃食べる?って言ったら
もう口から何も食べれないはずなのに、
ウンとうなづいて頑張って
一切れだけ食べてくれた。

 

そして精一杯の声で、

「あんたこんなバカな事して…」
フォーク持つ俺の手の刺青が見えたんだね。

 

こんなにも怒られる事が
嬉しいのは初めてだったよ。でもすぐに

 

「慎のライブに行かなきゃねぇ」

涙をこえるのに必死で何も言えなかった。

 

横にあったついてないテレビを
見るふりしてごまかした。

 

きっとばあちゃんの心の中では
20代の若き鈴木慎一郎が灼熱の
赤坂ブリッツでガンガンに
歌っているのだろう。

 

ファンの皆の多くも知ってる
あの赤坂ブリッツ公演。

 

俺はあの時代のあのライブ。
6月9日赤坂ブリッツでのステージを
はっきりと覚えてる。

 

二階席の目立つ所にばあちゃん…
いたんだ。
綺麗に染めた紫の頭で。
湘爆かよ!(笑)なんて言いながら、
オシャレなばあちゃんだった。

 

下町の美容院でいつも髪を紫に染めていた。
そんなばあちゃんを幼き俺は
いつも椅子に座って待っていた。

 

それが楽しかったのを覚えている。

 

BLOODを転がし始めた頃、
新宿MARZのワンマンにも
何度か俺に内緒で見に来てた。

 

慎のバラードが好きだ。
そう言ってた。

 

12月にLIVE決めたよ。
ブリッツみたいに
見やすくないけど呼びたい。

 

それを俺の夢にしたい。
車椅子でもいいから。

 

もう一度見せたいよ…。

 

見てよばあちゃん。

 

会場は狭くなっちまったけどさ、
歌、少しはうまくなったよ…。見てよ。

 

病室から帰る時、俺の顔を
しっかりと確かめる様に見るんだ…。

 

「またすぐ来るから」と言うと
とっても綺麗な笑顔を見せてくれる。

 

俺の顔をじっと見つめて

「いい男だねぇ…」

って褒めてくれる。

 

生命って本当に凄い。

 

勝手に死ぬ奴。許せないよ。

 

つらいだの苦しいだの言っちゃだめだ。
頑張らなきゃ。

 

生命は最後の最後まで輝かすものだ。

 

それが人間の使命だ。

 

そんな人間は本当にカッコいいよ。

 

ばあちゃんは俺が痛いか?って
聞いても絶対に首を縦に振らない。

 

つくづく俺の無理ばかりする
負けず嫌いは遺伝子なんだって実感する。

 

俺はこの年になって今、人生で
一番大切な事を学ばせてもらえている。

 

愛情。優しさ。強さ。

 

俺は今素晴らしい一瞬に立ち会っている。

 

何が何でもこの経験を
己の最高の心の財産にする。

 

自分が一番苦しいのに、
ばあちゃんは命がけで
俺に微笑みかけるんだ。

 

それはとても強くて揺るぎない。

 

これが本物の人間の強さだ。

 

その笑顔はどんなに痩せ細っても
世界一、宇宙一美しくて
尊くて輝かしいものだ。

 

それを俺は正面から受け止められる。

 

こんなに幸せな事はない。
そう思いたい。

 

だからすべてをパワーに変えなきゃダメだ。

 

それが俺の唯一の出来る事。

 

全部を力に変える。
自分に言い聞かせている。
ありがとうと笑って言うんだ。

 

俺は多大な影響をばあちゃんから受けた。
戦争の話し、たくさん聞いた。

 

俺の死んだ友、シンガーの槙健一が
病の身体を押して長崎で
立ち上げたピースコンサート。

 

俺が何度も出演したのは
戦争に対してのある想いからだ。

 

そして「戦意」というアルバムを
以前出したが、それもばあちゃんが
影響してる。

 

戦意は絶対に悪だ。

 

でも戦意を秘めながら人生を絶対に
折れずに闘い続ける事。

 

それこそが自分や愛する人達を
幸せにするはずだ…と。
そんな気持ちで作り上げたアルバムだった。

 

広島で被曝したばあちゃん。

 

広島、俺がまだ子供の頃、何度も行った。

 

ばあちゃんの兄弟4人共広島らしい
柄の悪さに子供ながらに
ビビりまくった思い出もある。

 

仁義なき戦いか!?と。極妻か!?と。
思い出ばかりだ。

 

ばあちゃん。ありがとう。

 

だけど俺はまだあきらめない。

 

奇跡の胸ぐらを掴んで。

身を持って奇跡、信じてるから。

絶対にあきらめない。

 

でも、果たしてそれでいいのかな?

 

いいんだよな。

 

神様!何だってするから頼むよ…。
俺のばあちゃん取らないでくれ。

 

病室を出る時にはいつも心に誓う。

 

生きてる限り正義をつらぬく。

 

強く生き抜く。

 

人の世に生きる以上、正しいルールも
間違えたルールは必ず存在する。

 

人を裏切ったりバカに
したりする事は最低だ。

 

人を愛し大事な人を守り抜く事は
いつの時代も正しい。
腐り切った物事には絶対に屈しない。

 

徹底的に生きまくる。

 

10月8日。

そしてばあちゃんは今、呼吸すら
もう自分では出来なくなってしまった。

 

体は硬くなり冷たくなり目は
もう天井ばかりを見ている。

 

親族が集められたが、
何とか持ちこたえた。

 

またね。と俺は今日も病室を出た。

 

数日後、夜中25時。

 

ばあちゃん危篤の連絡。

 

急いで車を飛ばしたが間に合わなかった。

 

ばあちゃんが空にいっちまった。

 

今までの人生でこれほど
涙を流した事はなかった。
ばあちゃんが焼かれてゆく。

 

その姿を見た時、俺は生きようと決めた。

 

不思議だな。

 

何だか前よりもばあちゃんが
近くにいる様な気がするよ。

 

そして俺、死ぬのが怖くなくなったよ。
その時にまた会えるんだろうね。

 

手をつなげるんだろう。

 

いつも胸にいるから。

励みに生きてゆく。

声が聞こえる。

皆元気で。

 

鈴木慎一郎

2013年10月